設計者の自邸である。
わたしたち家族は非常にマイペースである。各々の趣味を持ち、それらはほとんど関係しない。どこかでギターの音が響けば別のどこかで映画の音が聞こえてくるなど、同時多発的にことが起こる。よく喋る日もあればあまり喋らない日もある。ものも多い。本、玩具、植栽、楽器、器など、統一感なくバラバラに買い物をする。しかしバラバラながらゆるく馴染んでいて、何故か心地良いのである。
建物はみなし道路や路地など、幅員の異なるみちが入り混じる地域にある。都心に近く、美術館や劇場など様々な文化に触れやすい場所でありながら、下町の雰囲気漂う町だ。車の交通量は少ないが、地域住民以外の人も多く往来する。密集市街地であり、ほとんどの住宅が道路ギリギリまで建てられている為か、日常的にみちを介した住民同士の交流を見ることができる。新陳代謝が激しい土地柄、古い長屋や新築住宅だけでなく、商店や社寺など、多様な建物が混在した独特の景観が形成されている。私がこの町に心地よさを感じたのは、なんとなく自分たちに似ていると感じたからなのかもしれない。そして、この場所になじむ住居をつくりたいと漠然と考えた。
なじむとは何か。自然性や時間性、主観性や客観性等の多様な要素を含み、論理的に説明するのは難しい。本質的でありながら人の気持ちで揺らぐ程不安定なのだ。パブリックとプライベートが混在する都市においては尚更複雑化する。しかし、人の基盤を成す重要な要素である。そこで、人・住居・都市が気持ちのゆらぎと共に、都度関係を築ける住居を目指した。
まず街と住居の関係を検討した。三方位を道路に囲まれた不整形地で必要面積を確保する為、建物を境界際まで寄せる構成とした。街との距離が近くなる為、公共と私的の関係を慎重に整えた。街と連続し人が親しみやすいスケールや、歳月を重ねる自然素材の採用など、時間が形となるデザインを心がけ、互いが圧迫感を与えないよう配慮した。開口部は各辺の環境を読み取り、プライバシーを守りながらも道路と繋がり、生活の気配がにじむよう配置と寸法を決めた。
その上で、環境や人との対話を通じて感覚的に要素を配置し、更新の痕跡を可視化しながら調整を重ねた。すると、大きな窓とそれを隠す垂れ壁、堅牢なRC壁と迎え入れるベンチ、透過性の高い手摺と遮蔽性の高い手摺など、相反する要素が内外で反復し、関わり合いながら平衡を目指す空間が生まれた。
多様な関係は内部構成にも表れる。天井高さや床レベル、スケールの異なる領域が連なる。環境を意識しながらも、つながりたいがつながりたくない等といった、アンビバレントな情味のある感覚を否定することなく、計画に織り込んだ結果である。それらを吟味した素材や納まりが程よい緊張感を与えながら拠り所として横断する。素材、納まり、構成は支配的になるのではなく、ありのままの良さを活かしている。各エレメントが絶えず関わり合う様は、お喋りしているようで楽しい。
結局、関わることでしかなじむことはない。日々のゆらぎに合わせて空間との関係を選択し、持続的に関わることで、少しずつ街になじんでいく住居を目指した。
location           osaka
program          residence
structure          木造
size                  105.8㎡
completion      2025.06
photo      Yosuke Ohtake

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