なじむ住まい

人や場所、そしてそこにあるものが、自然と「なじむ」ことを何より大切にしています。素材や納まり、環境、そして空間の構成。それら個々の要素が主張しすぎたり、支配的になったりするのではなく、それぞれがありのままの良さを活かし、引き立て合うような豊かな空間。そこに身を置く人々が気負うことなく、呼吸をするように自然体で過ごせる。そんな、心から安らげる場所を築いていくことが、私たちの理想です。

自然素材と共にある

土や木といった自然素材は、それ自体が生命の記憶を宿し、呼吸を続けています。私たちが目指すのは、単に素材の良さを羅列することではありません。土壁が刻一刻と移ろう光の影を捉え、木材が家族の歩みと共に深みを増していく。そんな、素材と人が呼応し合う「時間の豊かさ」を住まいの中に編み込んでいきたいと考えています。歳月を重ねることが劣化ではなく、成熟へとつながる住まい。 触れるたびに心が安らぎ、五感が静かに研ぎ澄まされていくような、本物の素材だけが持つ気配を大切にしています。

数値のみに頼らない快適さ

快適な住まいにおいて、確かな温熱環境の計画は欠かせません。断熱性能などのスペックを重視するのはもちろんですが、建物はあくまで「人の手」でつくるものです。どれほど高性能な素材であっても、施工の難易度が高すぎたり、経年変化への配慮を欠いていれば、その真価を十分に発揮し続けることはできません。私たちは長年の経験から、施工の確実性と歳月の経過を見据えた素材選定を行い、実効性の高い温熱計画を立てることを大切にしています。その確固たる土台を築いた上で、風の抜け方や光の採り方を追求していく。そうして初めて、数値だけでは測りきれない、人が「本能的に心地よい」と感じられる空間が生まれるのだと信じています。

徹底的な対話

私たちは、ご依頼主さまとの対話を惜しみません。それは、その人になじむ空間を描くための、最も根源的な作業だと考えているからです。良い建築は、建築家ひとりでは生まれません。ご依頼主さま、つくり手、そして建築家の三者が同じ景色を見つめ、想いを一つにした先に、本当に豊かな空間が結実します。その「想い」をたしかな形にし、着実に意思疎通を重ねるために。当事務所では図面や模型、精密な3Dモデリングやパースなど、あらゆる手法を駆使して、完成までのプロセスを共に歩むことを大切にしています。

積み重ねる検討

一見、何気ない「静かな空間」に辿り着くためには、実はその裏側で、膨大な量の思考と試行錯誤が必要になります。私たちは、一度の図面で答えを出そうとはしません。納得がいくまで、何度も、何度でも図面を引き直します。山のように積み重なる検討の跡は、ご依頼主さまにとっての「最善」を絞り出すための、泥臭くも誠実な対話の証です。図面と向き合い、悩み抜いた時間の長さは、そのまま完成した住まいの「深み」になると信じています。私たちはその手間を惜しまず、最後の最後まで「本当にあるべき形」を追い求め続けます。

細部にこだわる

素材の「ありのままの良さ」を活かすためには、実は極めて緻密な「納まり」の設計が不可欠です。自然な素材が、あたかも最初からそこにあったかのように静かに佇むためには、素材同士の出会いや線の消し方に、一分の隙も許されません。細部が整って初めて、素材はその真価を発揮し、空間に心地よい静寂が生まれます。その意図を現場の職人へと確実に繋ぎ、理想の空間を1mmの狂いもなく現実のものとするために。当事務所では一般的な基準を遥かに凌駕する、膨大な数の図面を作成します。細部まで描き切るという執念こそが、素材に命を吹き込み、住まう人を深い安らぎで包み込むための鍵になると考えています。
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